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DON MANNER

丼教典

丼の作法

日本人は、
食に対して「感謝」を捧げる民だ。
命の恵みに我々はごく自然に感謝し、
手を合わせる。
丼という多様な命の詰まった存在に対する感謝と畏敬の念は深い。
それゆえ、
全国丼連盟は、
丼を食するとき、特別感謝を捧げる作法をここに提案する。

 

今、目の前にある丼は、あまたの命に溢れる宇宙である。手の平に込められた、食材を通して与えられる命に対して、目を瞑り、心の中で想いを馳せる。

 

心の中で命との対話をしたならば、次は両手を合わせて言葉に出し、感謝を具体的に示す。「いただきます」と声に出そう。

 

いよいよ、丼に被せられたフタを外す。まさに宇宙誕生のビッグバンの瞬間だ。現れる丼の全容を思い、ワクワクドキドキするのは当然だ。しかし、ここは逸る気持ちをグッとこらえる。そして左手で丼の縁を添えるように持ち、右手でフタを手前からそっと「の」の字を描くように向こう側にあける。

 

さらに緊張するのが、フタの裏についた蒸気のしずくが垂れないようにすることだ。フタを置く前に、丼の右縁にフタを数秒立て掛け、しずくを切る。これを「露切りの所作」という。

 

ようやく実食だ。しかし、このとき注意したいのが、丼の魅力に引き込まれ過ぎ、丼の魅力を十分に堪能しないことだ。丼は、和の食器に触れた感覚、見た目のインパクト、心を蕩かせる香り、舌上におどる飯と食材のハーモニーなど、すべてで堪能する必要がある。考えるんじゃない、感じるんだ!

 

丼を堪能する至福のひと時。それは一杯の丼に込められた食材という命、受け継がれた文化、地域の宝、そして料理人のおもてなしの心が混然一体となり、丼という一つの器に濃縮された結果である。最後に発せられる「ご馳走様でした」の一言は、そのすべてへの包括的な感謝に他ならない。心をこめて、言葉にしよう。